下に

 
■トイレ掃除日報
 
猫神様がいなくなって、どれだけの月日が過ぎただろうか。
トウゴス面が始まっても戻ってこなかったのは間違いない。それ以前となると何面以来だろうか。
思い出せない程に忘却の彼方なのか、それとも単に私の物覚えが悪くなったのか。おそらくは、両方だろう。
私は皮肉な笑みを浮かべて、ブラシを手に取って『日課』の消化を始めた。
猫神様が還ってきた時、気持ち良く用を足してもらえるように、トイレ磨きの修練を続ける。誰に言われたわけでもない、自分でそうしたいと思っただけの事だ。
 
トイレの外では毎日のように戦が起こっている。トウゴス面は、かれこれ40期近くになるそうだ。武将達の顔も、いつの間にか八割方は見知らぬものになっていた。
外から聞こえる戦人の咆哮に然程興味はない。今日も一人黙々と小の便器を磨いていると、清掃を終えたばかりの便器を使う男が現れた。
私は特に興味を抱かず次の便器へ移ろうとしたが、男はライニングの上を滑らせて何かを寄こしてきた。私の前でピタリと止まったそれには「サンポール」の文字があった。
 
「なんのつもりだ」
背中越しに男に語りかける。
「あちらの方から」
そう答えた男の声は、私を即座に振り向かせる懐かしいものだった。
 
「風神みょんふぁ……いや、よござんす縦島……?」
私の驚きの声に、猫肉の一片であるよござんす縦島は口の端を上げて笑ってみせた。シワが深くなっている気がした。
「懐かしいな。何をしに」
「用を足しに来たのさ」
「馬鹿言うなよ。小便なんかどこでもできるだろ」
「だな^^」
「あちらの方、とも言っていたな。見た所、お前だけのようだが……お前が来た理由と関係はあるのか?」
渡されたサンポールをグビリ、と飲みながら訪ねる。
すると縦島はトイレの壁を指差した。
何かあるのだろうか、釣られて見つめると、突然壁が外側から打ち壊された。ガレキの中から、これまた懐かしい顔が姿を覗かせた。
 
「かっぱ……現役バリバリのあんたまで、何故こんな所に」
「現役だからだよ」
かっぱはつるはし片手にそう告げた。
その言葉の意味を介するまでには結構な時間を要したが、私がトイレを磨き続けた時間と比べれば些細なものだった。
 
 

 
 
桜梅桃李国との戦争が間近に迫っていた。
私が磨いているベルベリアの便器には、何某の隠し遺産でもあるのか、他国が狙っている……そんな話を縦島とかっぱから聞いた私は、立ち上がる事を決めた。
槍を持つ気概は湧かないが、トイレを狙われるとあらば、話は別だ。襲い来る火の粉は払わなくてはならない。
かといって、猫肉部の主を名乗るにはおこがましい。猫肉部トイレ課として国を興すと、幾人かが門戸を叩いてくれた。
正直、誰が誰だか分からないが、「だお」の二文字があれば問題ない。それだけで我らは猫肉の友になれるのだ。
 
 
「まずは猫神様の盟友を呼ばねばなるまい」
私の最初の指令に応じて、ぼんたん!!!!1を始めとした幾人かが天水の民に手紙を書いてくれた。
一仕事を終えた私は、執務室から司令官室へと早足で向かった。
私の心労は、少しでも和らげなくてはならない。その為、司令官室の設備は充実させている。一番のお気に入りは、豪壮な赤いソファだ。
だが、司令官室に戻った私は、目をひん剥いた。ソファにはハゲ……もとい、かっぱがふんぞり返っているのである。
 
「そこは私の席だが」
「君主の戦争ボーナスが勿体ないから、初戦の間は俺が座るお。シェリーは筆頭過労でもやるといいお^^」
「嫌だ、今からそこに座ってノンビリと築城記を読むのだ」
「築城記は絶版だお。キビキビ働かないと、手が滑るかもだお^^」
 
解雇ボタンは椅子のひじ掛けに内蔵されている。
言い返したい所だったが、私の生死は既にかっぱの手の中なのだ。
 
歯ぎしりをしつつも司令官室から出ると、猫娘が足早に駆け寄ってきた。
「こんな所にいたのかお、シェリー」
「猫娘か。味玉泥棒を追いかけて外に出ていたのでは」
「そうだったんだけど、こんなの見つけたんで報告に戻ったんだお^^」
 
猫娘はそう告げると、ポケットからスマホを取り出して、外で撮ってきた写真を見せてくれた。
映っていたのは、綺麗な顔で死んでいる天水の民だった。
 
天水の民 志願兵(0) 74時間28分
 
 

 
 
初戦は、滞りなく終わった。
猫肉部得意の地蔵守備で受けて戦意が高まった所で一斉を打ち込む、いつものパターンである。
 
兵舎でくだを巻いてだおだお言いっている諸将達を横目に、私とモコノクサは休日返上で、戴冠の儀の準備に追われていた。
戦が終わっても、かっぱは司令官の椅子を返してくれなかった。かと言って自分が居座りもしない。
トイレの主は、交代制になったのである。
かと言って、新たな主が掃除してくれるわけでもない。トイレ掃除はなおも私の仕事だった。
 
「天水の民殿! 前へ出るお!」
数か月後。
ようやく整った禅譲の間に、モコノクサの声が響き渡る。
整列した武将達の中から、ロンパリ目の天水が抜け出し、河童の前に跪いた。
死んだと思えば生きていた、己鯖を体現したような男だった。
 
「次の戦の君主は天水だお^^」
「ゴマフアザラシです」
相変わらず何を言っているのか分からないが、それが天水である。
かっぱから授かった冠を被り、私の部屋から持ち出した王の座に腰かけた……その瞬間であった。
 
 
「奇襲!! 建てますよの奇襲!!」
傷だらけの兵士が、禅譲の間に飛び込んできたのである。
国境の最前線を守っていた枯れ木の兵だった。
 
「開戦までにはまだ二年あるではないか!」
「人数差を考慮しての奇襲かと!!」
「ぬう……天水、初仕事だ! 我々に指示を!」
そう叫びながら天水の方に振り返り、皆もそれに習う。
すると天水は、懐に忍ばせていた巻物を手にして、その場で広げてみせた。
 
「猫神音頭だお^^」
「はあ……?」
「国法を定めるお。みんなで踊るお^^」
 
(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ 天水の民より
(・ω・)ノ                                           (・ω・)ノ 天水の民より
(・ω・)ノ          み〜んなで お〜どろう 猫神音頭〜               (・ω・)ノ 天水の民より
(・ω・)ノ                                           (・ω・)ノ 天水の民より
(・ω・)ノ        アラヨッサ ヨイショ アラヨッサ ヨイショ              (・ω・)ノ 天水の民より
(・ω・)ノ                                           (・ω・)ノ 天水の民より
(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ(・ω・)ノ 天水の民より
 
君主には逆らう事は、すなわち解雇を意味する。
我々は奇襲を受けながらにして、猫神音頭を踊る羽目になり、
戦後、苦労して作り上げた禅譲の間は、盆踊り会場と化した。
 
 

 
 
3 : 天水の民 04/15/(Mon) 21:17 
 
残念だお>< おつだお(=^ω^)ノ
 
天水はそう告げて、ピョンコスに君主の座を明け渡した。
 
……四人目の君主で迎えた283プロダクションとの戦争は、劣勢であった。
猫肉部必殺の地蔵守備も通用せず、ベルべニアは落ちた。
炎に包まれる砦を呆然と見つめながら、マンコスがうーうーと鳴いたが、誰も止めるんだおとは忠告しない。
昔、その指摘を受けた魔龍公は、シャドウバースの地で生きている。猫神様はグラブルだ。
皆変わってしまった。敗走の最中、そんな感想を持ってセンチな気分になったが、きっと戦う場所は違っても、中身は何も変わらないのだろう。
グラブルのバグを掘り起こしてイベントを中止に追い込んだ猫神様がいい例だ。
 
「そうだ、猫神様に習うとするか」
 
敗走の地ルザリアで一息ついた私は、隣国のビッカメ娘振興組合に国書を書いた。
ヤードーを実質無償で譲れ、という提案である。これがあると良い後方都市になる。
受けてもらえるかどうかは、賭けだ。出来る事なら、獣道は歩きたくない。
 
 

 
 
ビッカメ娘振興組合は、滅んだ。
代わりにヤードーを統治したドーター自警団は猫神様の首を所望し、杉花粉撲滅委員会は交渉を受け流した。
残された選択肢は、前進か獣道しかない。
大いに悩む決断ではあったが、答えを出してくれたのは新たに加わった諸将の奮闘だった。
我々は前に続く道を選び、283プロダクションへの反撃に転じた。
気が付けば、相手領土は海の先。もう一つしか残っていない。こうなると、武将達はこぞって造船所の門を叩きに来る。
 
シェリー・ウィンタース@【重要】 > 「ははは、雇えるのう レッドストーンと幼女と戦列艦ヴァーサに乾杯!」 (04/17/(Wed) 21:51)
マンコス^^@ランベリー > 「ははは、雇えるのう」 (04/17/(Wed) 21:52)
天水の民@ランベリー > 「ははは」 (04/17/(Wed) 21:54)
かっぱ@ランベリー > 「ははは雇えるのう」 (04/17/(Wed) 23:28)
ピョンコス^^@ランベリー > 「グラブルと芦田愛菜ちゃんとヴァーサに乾杯!」 (04/17/(Wed) 23:31)
 
皆の笑い声と、乾杯のグラスの音が造船所に響く。
猫神様はいなくても、彼が遺してくれたヴァーサは今も戦国の世にあるのだ。
整列したヴァーサ大船団はウォージリスを二月で火達磨にし、戦は終わった。
暗闇の中、猫神様の怨念の如く燃え上がる都市を眺めている私の肩が、ふいに叩かれた。
 
「戦争、お疲れ様アル^^」
「豆野郎……」
 
ゴキブリのような生命力で生き残っていた、新参のタオである。
彼の部下には雑兵しかいないらしい。いや、いるならまだ良い。雑兵でさえも切らしているともっぱらの噂だ。
 
「いよいよ次は大仕事アル^^」
「決勝か、猫肉らしく横やりか。いずれにしてももう一声だな」
「違うアル。論功行賞アル。タオを労えアル^^」
 
論功行賞。
確かに、皆の士気を高める為にもベストのタイミングかもしれない。
式典の準備を部下に命じようと兵舎を覗くと、モコノクサやおどるほうせきが、文机と格闘するように登用を書き続けていた。
 
「ちょっと、頼みがあるんだが」
 
二人がギロリと睨みつけてくる。
私は肩身の狭い思いをしながら、何名かの猛者に手紙を書き、逃げるようにして自室に戻り、huluでジョジョを見た。
 
 

 
 
論功行賞の間は、百人入っても大丈夫な広さを誇る。
とはいえ、一国に百人の武将が集う等、過ぎ去りし日の追憶でしかない。
私は自嘲気味に鼻息を漏らし、整然と並んだ武将達に論功行賞の発表を告げた。
 
「この度の283プロダクション戦、大儀であった。
 諸将達には貢献に応じた金米が与えられるが、この度は特別に労いたく、この席を設けた。
 それでは、戦功著しかった者の名を読み上げる。前に出よ」
 
そこまで口にして、一度全員の顔を見渡してから、個別に名を呼ぶ。
窮地でも敵地の情報を探り続けたソーナンスライム、
出兵情報を調べ上げて朝駆けを防いだKRKNTN、
敵拠点を落とした縦島・かっぱ、モコノクサ……
 
そして、最後に自分をしっかりageる事も忘れない。
「国を鼓舞し続けた功」として、ほくほく顔の諸将達の横に私も並び、
背後から白眼視されながらも、授与役のぼんたん!!!!11から宝物の箱を受け取った。
 
中身の手配は、我が国に加わったばかりの物欲市民が担っていて、私は何も知らない。
箱をガサゴソと振りながら自室に戻り、早速箱を開けてみると、そこにあったのは見慣れた道具であった。
 
「デッキ……ブラシ……?」
 
私が首を傾げているところへ、283プロダクション戦で君主を勤めていたピョンコスが入ってくる。
 
「それが宝物か、ワロスwwwwww」
「私を嘲笑いに来たのか」
「違うお。決勝だから君主を戻しに来たんだお。デッキブラシも原点回帰しろって事だお^^」
 
ピョンコスがそう告げて指を鳴らすと、彼の部下が司令官の椅子を抱えて入ってきた。
ようやく、本来の姿に戻れる。数十年ぶりに赤革に背中を預けたが、すぐ違和感に気が付いた。
この椅子、何か匂う……。
 
「ピョンコス、椅子に何かしなかったか?」
「味玉零したけど、ちょうどテレビに愛菜ちゃんが出てきたから、掃除忘れれたお^^」
 
私は、味玉の匂いと戦いながら、貿易都市ドーター自警団との戦に備える羽目になった。
 
 

 
 
――1672年、晩夏
 
気がつくと、私は独房のような小部屋のベッドで横たわっていた。
家具が何もない殺風景な部屋で、明かりは豆電球一つだけと薄暗い。
たった一つだけ設けられている小窓からは、小ぢんまりとした海が見える。
猫の額ほど、というには小さすぎるだろうか。戦時中、何度か目にしたゼルテニアの海だった。
 
「やっと起きたか、シェリー」
私の起床を見計らったかのように、チンコス・ザ・グレートが部屋に来た。
甲冑には流れ矢が刺さり、さながら落ち武者のような風貌である。
 
「私は、何故ゼルテニアに?」
「ベルベニアは落ちたのだ。錯乱したお前は、対船計略でヴァーサを探し徘徊し始めたので、ここに無理矢理引っ張ってきた」
「そうか。戦況は」
「潮だな^^」
 
 
 
私はチンコスに先導されて外に出た。
大広間には諸将が集まっており、何かを囲んでいる。
近づいてみると、首を落とされた猫神様の遺体だった。
どこからか、かっぱとクソ出兵ルーパーの歌声が聞こえてくる。幾とどなく耳にした、サライだった。
 
「これは何事か」
私が問うと、血まみれの牛刀を手にしたピョンコスが前に出た。
 
「我らは猫神の首を差し出し、白旗を掲げる事に決めた」
「神を犠牲にするというのか」
「そうだ。だが、手土産は多い方が良い。
 安心しろ、首は二つではない。私の首も一緒だ」
 
その一言で、私は全てを悟った。
猫神様の前に正座し、深く頭を下げてから、ピョンコスを見上げる。
彼の背後から降り注ぐ陽光は弱く、微かに秋の気配が漂っていた。
 
「それで良いのだ。猫肉部はあるべき姿に戻らなくてはならない」
「他に、言い残す事は?」
「残念だお>< おつだお(=^ω^)ノ」
 
 
・【追放】「猫神の首は差し出すお^^早くヤードーよこすんだお!」(ピョンコス^^) 猫のイデアは猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時40分)
・【追放】「船専計略は中立の海に沈むんだお^^」(ピョンコス^^) シェリー・ウィンタースは猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時40分)
・【追放】「マンコス^^」(ピョンコス^^) マンコス^^は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時42分)
 
・【追放】「キャスの準備よろだお^^」(KBSトリオ) ピョンコス^^は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時45分)
 
・【追放】「」(KBSトリオ) ヨ〇バシカメラは猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時47分)
・【追放】「」(KBSトリオ) タニシは猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時47分)
・【追放】「」(KBSトリオ) よござんす縦島は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時48分)
・【追放】「」(KBSトリオ) 天水の民は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時48分)
・【追放】「」(KBSトリオ) かっぱは猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時49分)
・【追放】「」(KBSトリオ) ?は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時49分)
・【追放】「」(KBSトリオ) たなべそうたんは猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時50分)
・【追放】「」(KBSトリオ) 【水着】野獣先輩は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時50分)
・【追放】「」(KBSトリオ) シヴァ?は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時50分)
・【追放】「」(KBSトリオ) ぼんたん!!!!11は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時50分)
・【追放】「」(KBSトリオ) おどるほうせき?は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時50分)
・【追放】「」(KBSトリオ) 勇田 隆繁は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時50分)
・【追放】「」(KBSトリオ) 黒旋風★李逵は猫肉部トイレ課から追放されました。(23日22時50分)
 
・【支配】[1672年09月]貿易都市ドーター自警団の新元号発表警邏ちゃんはルザリアを支配しました。(計略+1)(23日22時51分)
・【滅亡】[1672年09月]猫肉部トイレ課は滅亡しました。(23日22時51分)  
 
トイレ掃除日報 完
 
 

戻る